最適化から組み合わせの経済へ

スタートアップビジネスのメンバーは、個人的な関係を通じて集まることが多い。

ビジネスも、結局のところ、人と人との関係だ。スタートアップのような小さな組織では、メンバー間のウマが合わずに破綻することも少なくない。

中心メンバーが恋愛関係にあるときには、とくに注意が必要だ。恋愛の破綻とともに、ビジネスも破綻した例を、私はいくつか知っている。

ビジネスが頓挫すると、メンバーはそれぞれまた別のパートナーを見つけて、新しいビジネスに再びとりかかる。

立ち上げの途中で離脱するメンバーも出てくるだろう。替わりに新しい人が参加すると、黎明期のビジネスの文化は、また違ったものになるはずだ。

新しいビジネスを生み出すのは、人と人の組み合わせだ。新たな組み合わせを求めて、「マッチメイキング」は延々と繰り返される。

「ビジネス」というと味気ないが、そこで起こっていることは、どうやら『セックス・アンド・ザ・シティ』とそれほど変わらないらしい。

経済は能力の組み合わせ

MITの統計物理学者セザール・イダルゴは、経済発展のメカニズムを解き明かす試みにとりくんでいる。

洗練された、多種多様な製品の生産には、様々な「能力 (capabilities)」が必要になる。ここで言う「能力」とは、インフラ、生産に必要な資源、人的資本などのことだ。

そうした「能力」の組み合わせを変えることによって、様々な製品の生産が可能になる。多彩な「能力」をそなえた国は、環境の変化にも素早く適応することができるというわけだ。

イダルゴにとって、経済とは、いくつものやり方で組み替えが可能な、「能力の組み合わせ」にほかならない。

イダルゴは、各国の統計データを整理し、生産構造 (能力の組み合わせ) のネットワークをマッピングしている (下図はマレーシアの例)。

それによると、シンガポール、韓国、中国の生産構造は複雑化が進んでいることがわかる。これらの国が発展を遂げている理由の1つだ。

私たちが「経済発展」と呼んでいるものは、生産構造のネットワークが進化していくプロセスのことだ。

テクノロジーは自生する

サンタフェ研究所のブライアン・アーサーは、今年出版された『The Nature of Technology』で、独自のテクノロジー論を展開している。

「テクノロジーは、それ自身によって、自らをつくり出す」—。

すでに存在するテクノロジーが、ほかのテクノロジーと組み合わさることによって、それ自体ひとつのテクノロジーになる。

こうして生まれた新しいテクノロジーは、別のテクノロジーと結合し、さらに新たなテクノロジーが生まれる。

新しいテクノロジーは、自らその需要をつくり出し、他のテクノロジーとの組み合わせを求め続ける。

アーサーによれば、テクノロジーは「組み合わせの進化」の産物だ。それは、特定の目的を満たすための手段ではない。有機的に「自生」するのだ。

組み合わせの経済

テクノロジーの進化とともに、経済も変容している。

「組み合わせ」にもとづいて、新しい製品や機能をつくり出していく、「生成経済 (generative economy)」へのシフトが進行していると、アーサーは指摘する。

今日のソフトウェア開発は、公開されている既存のAPIを利用したものが多い。「組み合わせ」のひとつのかたちだ。

その一方で、「独自技術 (proprietary technology)」の開発は敬遠されがちだ。

テクノロジービジネスは、会社を買収したり、自社ビジネスを部分的に切り離して売却したり、常に繰り返している。

「組み合わせの経済」はこれを説明してくれる。テクノロジービジネスでは、組み合わせの再編成が常態化しているのだ。

今日、様々な領域でコラボレーションが頻繁に行われていることも、「組み合わせの経済」への移行を反映していると考えられる。

そして、人と人が出会うことから始まるスタートアップは、「組み合わせのビジネス」にほかならない。

最適化から組み合わせの模索へ

イダルゴの経済発展のネットワーク論と、アーサーのテクノロジー論には共通点がある。

すでにある能力やテクノロジーの組み合わせから、新しいものが徐々に生成するという点だ。何もないところに、新奇なものが突如生まれるわけではない。

こうした「生成経済」では、マネジメントの仕事は、従来の最適化から、新たな組み合わせをつくり出すことが中心になる。

テクノロジーが特定の目的に特化して「ロックイン」されるとき、一国の経済がある製品生産に最適化したとき、「組み合わせの進化」はとまる。

天然資源の輸出に依存する国の将来的な発展の可能性はどれほどあるのだろうか。デトロイトはなぜ衰退したのか。なぜ今日、様々な分野で多様性の必要が強調されているのか。

「生成経済」は、これらを考えるヒントを与えてくれる。

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2 Responses to 最適化から組み合わせの経済へ

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